とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
…本当だ…なんだこの空気…
アズラエルの言った通り不穏な気の流れを感じ、彼は眉を寄せた。
二人は静かにホテルの屋上に降り立つ。
その不快な空気は建物全体を包み渦を作っている。
薄汚い人間の野心や妬みといった物が混ざり、千里眼ではそれを突き止められなかった。
階下の方で対峙する二つの大きな力。
それが右京とアスタロトだと直ぐに気付いた。
が、違う場所にも力を感じハニエルは首を捻る。
…マルバスと…フォカロル…と、もうひとつは?
一瞬ルシファーかと警戒したが、邪気とは違うが確かに力を発する何かがそこに居た。
不穏な空気は次第に勢いを増し、その得体の知れない力へと流れていった。