とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




年末が近付いて来ると一気に仕事量が増え、連日残業をする破目になった。



忍には「私は大丈夫だから気にしないで」と言われたが、気になって仕事も上の空である。



慌ただしく従業員がフロアを行き交う中、右京は椅子を軋ませてだらしなく天井を仰ぐ。



『…サキ…Mr.クロサキ!』



『ん…呼んだ?』



『はい、何度も呼びました。2番に日本支社からお電話です。』



『あいよ』と銀髪を掻きながら座り直すと受話器を取った。



「右京か?」



「なんだ、クソ親父か…」



「クソとは何だ、クソとはぁ!お父様と呼べ!」



「………」



叔父で義理の父である彼の言葉に右京は無言で受話器を置いた。



直ぐにまた鳴り出した電話を取って耳に当てた。



「お前、何で切るんだ!?まだ何も話してないじゃないか!」



「うるせぇな…用件はなんだよ…」



面倒臭そうに言う右京に義父は咳払いをして口を開いた。


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