とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「忍は元気か?」
「元気だけど…自分で聞けばいいだろ?」
「いや…実は考えたんだがな?孫の名前は──」
─ガチャッ…!
再び無言で電話を切ると右京は軽く伸びをして立ち上がった。
そしてまたもや鳴り出した電話を無視して出口へと向かう。
『Mr.クロサキ。お電話どうします?』
『すまないけど用件聞いといてよ、Mrs.エバンス。俺、現場手伝って来るからさ。』
エバンスはやっと仕事をする気になった右京に『かしこまりました』と苦笑しながら答え、受話器に手を伸ばした。
『申し訳ありませんが、息子さんはやっと仕事をする気になったみたいです。伝言は伝えますのでおっしゃっていただけます?』
『えー…そうなの?仕方がないなぁ…孫の名前なんだけどね?』
『………』
エバンスは右京が電話に出たくない気持ちが判ったような気がした。