とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




その荷物はサウスバンクの小さな劇場が届け先だった。



昼間先方に電話をして事情を説明すると、『出来たら今夜のステージで使いたい』と言われ、やむなく彼がバンで届ける事になった。



彼はロンドンからそこまで遠くない所で良かったと胸を撫で下ろし、腕時計に視線を落とす。



時刻は19時…。21時には帰宅出来るだろうか?



『住所はこの辺りのはずなんだけど…』



地図と周囲の建物を照らし合わせながらゆっくり車を走らせる。



あまりのんびりし過ぎてステージに間に合わなかったら、わざわざ運んだ苦労が水の泡だ。



『くっそ…ジムめ…!』



右京はグシャグシャになった伝票を手にひとり悪態を付いた。



< 163 / 469 >

この作品をシェア

pagetop