とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
あの後、頭を抱える右京の元に現れたジムは申し訳なさそうにおずおずと一枚の紙を差し出した。
『バタバタしててすっかり忘れてたんだ…すまない…』
それは他でもない、今右京の手にしているこの伝票である。
積み込み作業中に箱から剥がれ落ちたのだろうが、彼はそれを拾ってポケットに突っ込んだまま忘れてしまったらしい。
…もっと早く気付いていれば…。
今更そんな事を考えても、やってしまったものは仕方ない。
右京が口にした言葉はただ一言…『勘弁してくれ』だった。
ハザードを点灯させ車を道の端に停車させると窓から目の前の建物を見上げた。
『ここか…。』
とりあえず何とか予定時間内には間に合ったようだ。
右京はエンジンを止めて車を降り、建物の中へ足を踏み入れた。