とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
その劇場は大小幾つかのホールが集まった造りになっていた。
入口近くに居た案内係に聞くと、“クイーンズバリー”という劇団らしい。
『彼等のステージは一風変わってる事でマニアには人気なんですよ。』
お喋りな案内係が聞いてもいないのに話し出す。
『時間が出来たら妻と見に来ます。今日は仕事なので…』
はにかみながらそう答えると、教えて貰ったホールを足早に目指した。
『ここかな…?』
分厚い扉を押し開けると忙しなく動くスタッフ達が目に入った。
汗だくで舞台用の小道具や大道具を抱える男達。
『忙しいところ申し訳ないんだが…』
そう声を掛けると、傍にいた青年が右京を振り返った。