とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『だけどね?』と前を歩いていた彼女は振り返って微笑む。
『別にアイツの事、嫌いじゃないのよ?なんていうのかしら…変な所が似てるから、私と。』
似てるからこそ衝突するのだと語る彼女に右京も笑みを返した。
ホールの開け放たれたドアを潜り、彼女は『そこに下ろして』とステージの隅を指差す。
中の商品を気遣いながらそっと箱を下ろすと、彼女は梱包を解いて中を覗き込んだ。
『うんうん、これこれ!…よっ!…あれ、重っ!?』
『出します?』
軽々その椅子を持ち上げステージに二脚並べた。
その様子に彼女は『意外と力あるのね』と驚く。
『あぁ、着痩せするタチなんで。ちゃんと筋肉ありますから。』
クスクス笑う右京に彼女は思い出したように『あ』と小さな声を上げた。