とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
平屋造りのその建物はどこか懐かしい雰囲気だった。
長い廊下は所々傷んで修復の跡がみられる。
物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回す右京に『ボロでごめんなさいね』とイザベラは笑った。
『元々この建物は学校だったらしいわ。廃校になって取り壊される寸前の所を格安で手に入れたの。』
言われてみると確かに各部屋は教室の様に見える。
だが机の類いは無く、殆どが衣装や機材が収納されていた。
ふと前方の部屋から人の声が聞こえた。
どうやらスタジオらしい。
窓からこっそり覗く右京にイザベラは『そこは団員の稽古場よ』と教えてくれた。
『へぇ~』と呟きながら稽古の様子を伺う右京の首をクリスが掴む。
『見学に来たんじゃないんだぞ。』
『わ、わかってるよ!』
口を尖らせる右京に彼はやれやれと溜め息を付いた。