とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『こ、これはその…動かさない方がいいかも…』
『何故?』
『それは…えっと…』
しどろもどろな右京にクリスは溜め息を付いてイザベラに顔を向けた。
『底が腐りかけてる。恐らく相当古くからあるんだろ?無理に動かして破損したら、歴史的価値があったら台無しになる。』
彼は顔色ひとつ変えずに淡々と口から出任せを吐き出す。
『友人にこの手の品に詳しい鑑定士が居る。彼に見せても構わないか?』
“歴史的価値”という言葉にイザベラが目を輝かせ、興奮気味に『ええ、もちろん!』と胸に手を当てて答えた。
その様子に右京もホッと胸を撫で下ろす。
『とりあえず、他の骨董品を見ようか』とクリスが上手く彼女を誘導する。
…さすがポーカーフェイス…。
あまりにも自然に振る舞うクリスに右京は内心感嘆の声を漏らすのだった。