とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




その日は雨だった。



少し肌寒い空気の中、車を降りると小走りで入口に向かう。



『うへぇ…久しぶりだな、こんな雨は…』



肩に付いた水滴を払い落としながら呟くニックにクリスは『おい』と声を掛けた。



『判ってんだろうな?』



『大丈夫だって!鑑定士のフリをすればいいんだろ?』



楽勝楽勝~と笑う彼にクリスのみならず、右京も不安になって来た。



一体その自信は何処から湧いてくるのか…。



…まぁ、大人しくただの鑑定士を演じてくれたら問題ないだろ。



右京はジャケットの襟を整えると稽古場のインターホンを押した。



扉から顔を現したのは若い青年だった。



恐らく団員の一人だろう。



右京達をジロジロと睨み、『…なんか用?』と訝しげに口を開く。





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