とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
通り過ぎた部屋では演技の稽古をする団員や、歌を練習する団員が見える。
防音効果こそ無いが部屋の広さは充分ありそうだ。
団員の歌う唄が聞こえる隣の部屋にイザベラの姿があった。
広い部屋の真ん中に簡素な机を置き、カードを巧みに操っている。
右京達は彼女の邪魔をしないよう、静かにその様子を観察する。
彼女の手の平で消えては現れるカードにニックが『ワオ…!』と呟いた。
『巧いもんだな…』
『タネを明かせばガッカリするような単純な動作だ。…知りたいか?』
『ん~…遠慮するよ。解らないから面白い。』
“カードが消える”なんて事はあり得ない…“消えたように見える”のだ。
耳の後ろから出て来たように見えたカードは、指を鳴らすと両手から再び見えなくなった。