とある堕天使のモノガタリⅤ ～TRINITAS～

ニックの選んだカードは“ハートのクイーン”だった。



『では…このカードにサインをして頂けますか？』



『じゃあ、自分がサインします。』



右京はイザベラからペンを受け取るとわざと漢字で“黒崎”とサインをした。



彼女はそれを手にしている山に戻し、数回切ると机の真ん中にそっと置き目を閉じた。



…空気が…動いてる…。



恐らく普通の人間は気付かないだろう異変に右京はチラッとクリスを見た。



彼も右京に目配せしているのを見ると、どうやらそれに気付いたらしい。



ゆっくりとした空気の流れが止むと、イザベラは目を開けて３人に勝ち誇ったような笑みを見せた。



『瞬間移動が完了しました。…さぁ、確認して下さい。』



クリスは一歩前へ出ると、テーブルの上にあったカードの山を手に取り、一枚ずつ表にしながら並べる。