とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



『イザベラ·マッケンジー、30歳独身。元銀行員で、今は舞台女優だ。』



『元銀行員?…随分思い切った転職だな…』



夢を捨てきれず…という事なのかもしれないが、安定した職を投げるなんて普通なら中々出来ない。



不思議そうな顔をしたアランにダンは『そうでもないさ』とファイルに目を落とす。



『彼女は数年前に遺産を受け取ってる。…未婚で子供もないし、金には困って無かったんだろ。』



『なるほど。確か右京が、クイーンバリーの稽古場はイザベラが所有者だと言っていた。』



『遺産で買ったんだろうな。』



クリスの呟きにダンも頷いた。



『でも、あの稽古場は元々小学校だ。敷地も広いし、いくら格安って言ってもかなりの額だろう。』



恐らく彼女の遺産はほぼゼロに違いない。



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