とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ソファに寝転んで話を聞いていたニックが『なぁ』と突然口を挟んだ。
『どうしても腑に落ちないんだが、何故イザベラはあそこを買ったんだろう…』
『広い稽古場が欲しかったんだろ?』
『団員の数に似合わない。しかもクイーンバリーはその数を増やすつもりはないみたいだ。…なら、あんな広い稽古場は必要ないんじゃないか?』
彼の言う通りだった。
劇団が注目され始めたのはここ最近の話で、あの土地を購入した当時は成功する保証なんて無かったはず。
もしクイーンバリーが注目されなかったら、彼女は無一文になっていただろう。
それなのに何故イザベラは博打のような行動に出たのだろうか?
『…当たると判ってたのか?』
『馬鹿なっ!んな神様じゃあるまいし…』
『…神…』
鼻で笑うロイの何気ない言葉にアランが呟く。
一瞬、隠された真実が見えたような気がした…。