とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
生ぬるい夜風に当たりながらメールの送り主であるアラン·スミスに電話掛けた。
『やぁ、クロウ。お邪魔じゃなかったかな?』
2コールで出た彼が淡々とした口調でそう言った。
『大丈夫だよ。…で、話があるんだって?』
『あぁ、そうなんだ。どうやら“奴等”が動いたらしい。』
アランの言葉に右京はピクリと眉を動かした。
彼の話を黙って一通り聞き、『判った…』と短く答え通話を終了させる。
タバコに火を付け、吐き出した煙をぼんやり眺めた。
「…所詮俺は…人として生きる事は許されないって事かな…」
煙と共に闇に消える独り言に寂しげな笑みを浮かべた。
…大丈夫…守るべき大切な存在があるから…俺は…
「…右京?」
部屋の中から聞こえた声に彼は振り返る。
「居るよ…ずっと傍に…」
…俺の居場所はお前の隣だから…。
そしてタバコを灰皿に押し付けると、部屋の中へと戻るのだった。