とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ロバートの妻に下された診断は、末期の肝臓ガンだった。
絶望に打ちひしがれた妻は嗚咽を漏らしながらロバートにすがり付いた。
『嫌…嫌よっ!…死にたく…ないっ!』
弱々しい彼女に自分は何をしてやれるのだろうか?
そう考えた時、ロバートは彼女の肩を抱いて自然と言葉を吐き出していた。
『僕が君を支えるから─…』
…だから泣かないでくれ…。
妻とは別れるつもりではあったが、こんな別れ方は望んでいないのだ。
残り少ない彼女の命を無視なんて出来るわけない。
たとえ出来たとしても必ず後悔する。
ならば今は一緒に居て支えてやりたかった…ただそれだけなのだ。
『もう先は長くないんだよ、イザベラ…。僕は…何もしてやれない…』
なのに妻の傍に居てやる事にすら音を上げそうな自分がロバートは情けなかった。