とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ロバートの妻は意外と資産家で、幾つもの土地を保有していたらしい。
正式に離婚はしていなかったので、ロバートはそれらの一部を、残りは彼女の妹が相続した。
『ありがとう、イザベラ。君が傍に居たから僕は乗りきれたんだ。…そうだ、もし僕が死んだら…あの土地は君にあげるよ。』
『やめて、ロバート!もうすぐ結婚をするというのに…縁起でもない!』
何かにつけて弱気な発言をするロバートをイザベラが叱咤する。
その度に彼は弱々しい笑みを浮かべた。
なんだが嫌な予感がした。
でもそんな事を考えていたのは数日で、イザベラはやっと幸せに近付けた事に浮かれた日々を送っていた。
ロバートと再スタートする事を決め、銀行も退職した。
そして部屋も引き払い、彼と一緒に暮らし始めた。
全てが怖いくらい順調だった。