とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
それっきり神の言葉は聞けなかったが、イザベラは満足だった。
…私には神の加護がある。
そう考えると全てが良い方へ行くように思えて安心出来た。
どうせロバートは死ぬのだ。
だが、1つだけ許せない事がある。
それは自分を置いて先に逝ってしまう事だ。
最初は自分は寂しいのかと思ったが、途中で違うと気付く。
…これは寂しさではない…“憎しみ”だ。
こんなに愛しても報われる事はないという現実が憎かった。
“死は安らぎを与え…”
そんな神父の説教を思い出すと無性に腹が立った。
自分が不幸への道を歩むかもしれないというのに、彼が安らぎを得るなんて納得がいかなかった。
それがイザベラに決断をさせた。
…“どうせ死ぬなら私が殺してあげよう”…と。
神の加護を受けた自分なら上手く行くはずだ。