とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
その日からイザベラは取り付かれたようにマジックを学んだ。
最初はスライハンドと呼ばれる基本的な技法、そしてカードマジックを習得していった。
特に誰かの下につく事なく、その殆どは我流ではあったが時々団員に披露しては賞賛を浴びた。
『それ、舞台にも取り入れたら面白いかもしれないですね!』
『それは面白い…』
当時の座長の一言でクイーンバリーはマジックを取り入れた演劇へと変わったのはこの頃だった。
そこまでは期待していなかったが、イザベラにとっては好都合だった。
…これで色んなギミックを作ったとしても怪しまれる事はない。
彼女はその為にロバートに頼み事をする事にした。
『ロバート…貴方の所有していた土地に、確か廃校になった学校があったわよね?』
『ああ…あれか。』
『そこを貸して貰えないかしら?』
付き合い始めて彼女からそんな申し出をするのは初めてだった。