とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
もうすぐ彼は死ぬ。
イザベラはロバートがその頼み事を拒否する事はないと読んでいた。
『ああ、もちろん構わないよ。…だけど彼処は手放す予定なんだ。』
『えっ!?それはいつ?』
『来週の一時退院日に不動産屋が来る手筈になってる。』
…もう時間がないじゃない!?
その時確かに聞こえたのだ…“神の言葉”が!
…“己れを信じろ”…と。
イザベラはその言葉に背中を押され、大掛かりなギミックを仕掛けた。
ロバートの一時退院日は慌ただしかった。
彼はのんびりする暇もない程資産整理に追われていた。
だが、イザベラは婚姻関係がないため、その場に同席することが許されない。
ロバートに相談すらして貰えなかった事が、彼女の憎悪を増す結果となった。