とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
バスは数名の乗客が乗り込むと、ほどなくして動き出した。
『お隣、いいかな?』
窓の外を見ていた彼は、そう言われて慌てて『どうぞ』と座席を少し詰めた。
『…おや?…もしかして、アンダーソン警部では?』
隣に腰を下ろした紳士の言葉にアンダーソンは彼に視線を向けた。
『…貴方は…Dr.ベッカー…!?いやぁ、奇遇ですなぁ!』
『本当に!…お元気そうで。先日、署に顔を出したんですよ。』
『ほぉ、そうでしたか!実は私はもう引退しまして…。今はしがない探偵事務所をやってんですよ。』
『探偵を!?…うんうん、なるほど…貴方らしい。』
久々の再開に話が弾む。
Dr.ベッカーと最後に会ったのは何時だったか。
…確か未成年の失踪事件の時だ。