とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



当時『娘が帰らない』と意気消沈したその母親の精神状態を心配したアンダーソンはベッカーに診療を依頼したのだ。



『懐かしいですなぁ~』



『えぇ、もう5年位経ちますか…。』



『そんなになりますか!…ハハハ!そりゃ私も歳を取るわけだ!』



アンダーソンは薄くなった頭をポリポリと掻くと人の良さそうな笑みを浮かべた。



会話が途切れ、前の席に座っていた若者のヘッドホンから漏れてくる音すらよく聞こえて来る。



『…もう世代交代なんですかねぇ…』



先にそう口を開いたのはアンダーソンだった。



『最近時代の流れに着いていけないんですよ…若者達が何を考えているのか…』



『彼等には…独特な世界観があるんですよ。』



『私には理解できませんな。』



苦笑する彼を観察していてベッカーは“おや?”と思った。



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