とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
…彼は何か悩んでいる。
自然とアンダーソンの思考を読み取ろうとしている自分に気付く。
…またやってしまった…。
精神科医であるベッカーは、時々無意識に他人の心の内を覗こうとしている時があるのだ。
…今自分がするべき事はそれじゃない。
ベッカーは言葉を選んで紡ぎ出す。
『…若者に限らず他人の考えているなんてそうそう理解出来ませんよ。』
『ドクターでもそう思いますか!?…ハハハ!それを聞いて安心しました!』
『ハハハ…私だって血の通った人間ですから。超能力者やマジシャンみたいに言う人も居ますけどね!…あぁ、そういえば…』
少々強引にベッカーは話をすり替えた。
『今話題の“クイーンバリー”って劇団ご存知ですか?』
『あぁ、知ってますよ!この前テレビで“マジックを組み込んだ劇団”って特集されてたのを家内と観ました。』
『あれの座長…“イザベラ·マッケンジー”と言う女性らしいんですが─』
『えっ…イザベラ…?どっかで聞いた事あるような…』
アンダーソンは額に指を当てて考え込んだ。