とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




その頃のアンダーソンはスランプだった。



何をやっても裏目に出てしまい上手くいかない。



そうなると次第にやる気も削がれ、ただただ一日が長かった。



占いの類いは信じない方だが、多分そういう時期なんだと漠然と悟った。



『おい、アンダーソン!』



部長のいつもの馬鹿デカイ声に彼は『はい?』と振り向いた。



この歳になると上司も年下なんてのはザラである。



アンダーソンより3つ4つ年下のその男は左右に持ったファイルをちらつかせていた。



『失踪事件と殺人事件…どっちがいい?』



彼は一瞬考えて『失踪事件で』と手を差し出す。



年下の上司は『まったく…』と呟きながら右手のファイルをアンダーソンに手渡した。




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