とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
まるでここを調べに来る事を予期していたとしか思えない対応だった。
『刑事さん…!何か進展が!?』
『いえ…ここの前の所有者がロバートだったと資料にあったので…。中を見ても?』
『もちろんですわ!』
彼女はいつもの笑みを浮かべ彼らを招き入れた。
そのわざとらしい笑みを見たとき“あぁ、そうか”と理解した。
…これは“演技”だ。
以前見た泣き顔もこの笑みも、全て作り物だ。
だが、怯む様子もない彼女は、警察を欺く自信があるのだろう。
…上等じゃねぇか…!
建物をあちこち見て回ったが、アンダーソンの意気込みは無駄に終わる。
内心ガックリと肩を落としたが、彼女の前では意地でもそんな姿を見せたくなかった。
『刑事さん…─』
イザベラは穏やかな口調で台本を読むように言葉を吐き出していった。
アンダーソン達はその土地を後にするしか無かった。
認めたくないが、完全に彼等の“負け”であった。