とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
降車口に向かうアンダーソンは彼を振り返って言った。
『ご存知かな?トカゲの尻尾って再生するんですよ。』
彼の言わんとする事が解り、ベッカーは微かに身震いをした。
『あ、アンダーソン警部!彼女は…イザベラは最後になんて言ったんです!?』
『…“そこに無いのなら何も無い”って言ったんだ。…ね?あの女は強かでしょ?』
フッと笑ってバスを降りたアンダーソンは振り返らなかった。
『…だそうだ…。』
ベッカーはふぅ…と息を付き呟いた。
…『上出来です、Dr.ベッカー。』
耳の奥に聞こえて来た声に彼は安堵する。
今頃声の主であるアランはP2で悪人顔負けの笑みを湛えているだろう。
『こんなスリルはもう御免だ…』
ベッカーは思わず声に出してそう呟いたのだった。