とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



手を伸ばしてその箱を撫でるように触れた。



それの側面に施された見事な彫刻…。



以前これを見た後、P2に帰ってからちょっとした論議が起こった。



それはアンティークショップのオーナーであるクリスの『10世紀頃の逸品だった』という一言が発端だった。



『10世紀だって?そんなはずない。だってあの彫刻はどう考えてもルネッサンス最盛期のものだ!』



そう反論するニックにクリスは無愛想の仮面のまま小さく息を吐いた。



『確かにその特徴は否めないが、それにしては造りが時代に合わない。』



『っ!?…じゃ、じゃあクリスは10世紀にルネッサンスの彫刻技術が存在したって言うのか!?』



右京を挟んで口論を繰り広げる二人を、彼はただオッドアイをキョロキョロと動かし盗み見ていた。




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