とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
それが止まったと認識したのは団員達の声が聴こえなくなった時だった。
…この感覚…まさか…!
身体が勝手に反応してしまうほど良く知っている。
…間違えない!“神”が居る!
闇を睨む右京の背後で、バタンッ…!と大きな音を立てて箱の蓋が閉まる。
振り返った彼が目にしたのは見覚えのある髪の長い白髪の老人だった。
…ク…クロノス様っ…!?
おっとりとした物腰で降臨したのは、紛れもなく時間の神“クロノス”だった。
─サラサラサラ…
それはクロノスの手から溢れ落ちる砂の音だった。
時の砂を使って時間を操る…彼の得意な術である。
完全に術に嵌まってしまった右京は金縛りに遭ったように身動きが出来ない。
ただ緊張と息苦しさで異様なあせが噴き出してくるが、声を出す事すら困難だった。