とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
そんな右京を蔑むように一瞥してクロノスはやれやれと小さく首を振った。
─長く下界に居るせいで人間臭くなったのぉ…
『…違う…!俺は人間だ!』
─…ウリエルよ。人間になってお前に何の得があるのだ?
『…得?…ククク…』
うずくまるように自分の身体を抱いた右京は肩を震わせてクツクツと笑う。
そして顔だけ上げて深紅の瞳でクロノスを睨んだ。
『…んな事考えた事ねぇよ。』
クロノスの手から溢れ落ちた砂が風で舞い上がる。
次第に勢いを増す風にクロノスが思わずよろめいた。
『俺は…お前らみたいに損得勘定で生きてない…!』
─お前…術を…!?
突然右京の力が大きく膨れ上がり泉のように溢れ出す。
─これがベルセルク…!
クロノスは自分の術で彼を抑え込むことが出来ないと気付いた。
─杖を…アロンの杖を!
クロノスの声が脳内に響いたと同時に辺りが一瞬真っ白な光に包まれた。