とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



その光に目が眩んで顔を腕で覆い隠す。



部屋が元の暗闇に戻った時、目の前に現れたのはイザベラだった。



『…あんた…彼女に何を…』



ぼんやりと生気のない瞳のイザベラが手にしていたのは一本の杖…。



─アロンの杖を召喚したのだよ、ウリエル。



『杖を…召喚だと…?』



白い髭で覆われたクロノスの口角がつり上がったのが判った。



勝ち誇ったようにクロノスは語り出す。



─そもそも、何故アロンの杖が下界にあるのか…知っているか?



右京はイザベラをジッと凝視したまま彼の言葉に耳を傾ける。



─アロンはこの杖にある呪いを掛けたのだ。



それは手にした者の力…すなわち命を吸い取るのだと言う。



それを杖に蓄え力を発揮する。



つまり、アロンの杖の力は“命”なのだ。



─そんな物を神が手にしたら、不老不死の法則性が崩壊する。だから下界にあるのだよ。



右京はクロノスの話に吐き気を覚えた。



< 253 / 469 >

この作品をシェア

pagetop