とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
その光に目が眩んで顔を腕で覆い隠す。
部屋が元の暗闇に戻った時、目の前に現れたのはイザベラだった。
『…あんた…彼女に何を…』
ぼんやりと生気のない瞳のイザベラが手にしていたのは一本の杖…。
─アロンの杖を召喚したのだよ、ウリエル。
『杖を…召喚だと…?』
白い髭で覆われたクロノスの口角がつり上がったのが判った。
勝ち誇ったようにクロノスは語り出す。
─そもそも、何故アロンの杖が下界にあるのか…知っているか?
右京はイザベラをジッと凝視したまま彼の言葉に耳を傾ける。
─アロンはこの杖にある呪いを掛けたのだ。
それは手にした者の力…すなわち命を吸い取るのだと言う。
それを杖に蓄え力を発揮する。
つまり、アロンの杖の力は“命”なのだ。
─そんな物を神が手にしたら、不老不死の法則性が崩壊する。だから下界にあるのだよ。
右京はクロノスの話に吐き気を覚えた。