とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
自分の命は削りたくない…だから人間の命を使うのだと、顔色ひとつ変えずに語る神。
右京の身体の奥で沸々と沸き起こった怒りが支配していく。
人間達が崇め奉っている神の姿がこれでいいのだろうか。
『ふざけるなっ!!』
右京の怒声が風の刃と化してクロノスを襲う。
が、彼の目の前に居たイザベラが杖を盾にそれらを弾き飛ばした。
─この女の命を使わせるでない…大事な動力源なのだから。
『黙れ!それが神の言葉か!?』
─ウリエル。別に我は一方的に女を利用しているのではない。ちゃんと望みを叶えてやったのだ。
彼女の望みは恋人の死と自分の幸せだった。
クロノスはイザベラにアロンの杖を渡し、それらを実現させた。
─神は慈悲深くなければならない…。
だが、右京は思う…『それは違う』と。