とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
身体を覆っていた炎が消えても、彼の瞳はギラギラと紅く燃えて見えた。
─かっ…神に逆らう気かっ!?
『うるせぇ!お前ら神がどんなクソ野郎なのかは良く判った。』
クロノスは彼の紅い瞳に捕らわれたように身動き一つ出来ない。
『だがな、クロノス。いくら神がクソ野郎でも人間達はお前らを崇めてんだよ!慈悲ってのはそんな奴等に手を差し伸べてやる事だ!』
神に説教をする目の前のベルセルクにギロリと睨まれ、クロノスはゴクリと唾を飲んだ。
『…判るか?俺が今どれほどムカついてるか…。』
右京はアロンの杖の先をクロノスの喉に突き立てる。
『…この喉を引き裂いて悶え苦しむ神を眺めるのもありか…。』
口角を不気味に吊り上げる彼にクロノスは背筋が凍り付いた。