とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ふと右京が自分の足元に視線を落とした。
不思議に思ったクロノスは彼の視線の先を見る。
そこには地を這いながら右京の足を掴むイザベラの姿があった。
彼女は涙を流しながら必死に右京を見上げ、首を左右に振っていた。
“やめて…私の神を…殺さないで…!”
それを見た右京は瞳を悲しげに伏せる。
『…神に裏切られても彼女はお前を求めてる…。こんな理不尽な事があるか…!?』
右京はクロノスを抑え込んでいた手を緩めると一歩身を引いた。
『…イザベラ…お前はそれでいいのか?』
『…いいの…私が犯した罪だから…』
クロノスはその言葉にハッとする。
彼女は自分の叶えた望みを…過ちを悔いていたのだ。
言い様のない気持ちが込み上げて来たがクロノスは言葉にする事が出来なかった。