とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



田所は仕事もできるが従業員からの人気も高かった。



完璧なルックスと稀に見る紳士っぷり、おまけにいいとこの御曹司らしく、このホテルではまさに“王子”のような存在である。



だが、しのぶは知っている…彼のその“王子”は紛い物であると。



親の七光りと言われない為に、陰では人一倍努力しているのだ。



…そうだ…だから私には彼に勝てるわけない。



おそらく彼ならそこまで苦労しくてもそこそこの地位には着けるだろう。



「出来レースなんてつまんねぇだろ?」



何時だったか、飲んでる時に田所はそう言って笑っていた。



そんな内面的な彼の良さよりも、周りは外見を見て判断するのだ。



だが、しのぶが田所に一目置くのは決してかっこいいからではない。



その内面的な彼の強さに自分は負けたのだ。




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