とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
そんな“王子”よりかっこいい男がそうそう居るはずがない。
仕事に戻ろうとする従業員を「ねぇ」と引き留め、気が付けばその客について聞いていた。
「やっぱり沖田さんも興味あります?」
「皆が絶賛するその人がどれほどのものか見たいだけよ。」
「それを興味あるって言うんですよ!…噂では背の高い銀色の髪の毛をした方だそうです。」
「銀色の髪の毛?…目立つわね…」
今日はずっと裏方の仕事をしていたからロビーに行っていないが、フロントに行けばすぐ判るかもしれない。
…時間が出来たら行ってみよう…。
そんな事より、とりあえずは目の前の仕事を片付けるのが先だ。
しかも夜に飲みに行く約束があるし、残業をするわけにはいかない。
彼女は仕事モードに切り換え、足早に食堂を出ていくのだった。