とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
長い銀髪の間から覗くオッドアイがフッと優しく細められた。
「やっとこっち見た。」
久しぶりに自分の頬に触れる彼の指先に、忍は急に愛しさが込み上げて来た。
張り詰めた糸が切れた様に涙腺が緩む。
「右京…私…私ね…」
開き掛けた彼女の唇に右京はそっと人差し指を触れて黙らせる。
「何も言わないで…ただキスをさせて?」
優しく啄むような右京のキスに忍は黙って身を委ねる。
ジャージャーと流れる水の音がやけに大きく聞こえた。
至近距離で彼が囁いた「愛してる」に忍の瞳からポロポロと雫が落ちる。
「お前が言葉にしなくても俺にはお前の“愛してる”が聞こえるよ。」
「右京…大好き…!本当は会いたかったの!」
意地を張って素直に言えなかった言葉が溢れ出す。
彼は彼女の髪を撫で「うんうん」と頷いた。