とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
彼は何度もエコーの画像を見ながら「おかしいなぁ…」と呟いていた。
その瞬間、忍は前回の医者の言葉が間違っていたのだと悟った。
「帰ったらエコーの写真見せるけど、影らしきものもないの。」
「やっぱり…“アレ”か…。」
つまり、自分達の予想通りということになる。
「まずいなぁ…」と呟く右京に忍は躊躇いがちに口を開いた。
「右京は…後悔してる?」
「は?何が?」
「…この子が産まれて来る事を…後悔してる?」
電話の向こうで彼がはぁ…とため息を着いたのが判った。
「後悔なんてしたことないし、これからもしない。」
「…ホントに?この子が人として産まれなくても?」
「それは俺が身を持って知ってる。きっとこの先苦労することも。…でも、この世は捨てたもんじゃない…そうだろ?」
そう言う彼の声に忍は胸が熱くなった。