とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
異変があったのは数日後のクリスマスイヴの夜だった。
黒崎家の男連中はクリスマスケーキの後に晩酌を始め、既に500mlの缶ビールが5本空である。
「忍~!ビール~!」
「はいはい!ちょっと待って!」
居間から聞こえた声に食器を拭いていた手を止め、冷蔵庫からビールを取り出した。
その瞬間また下腹部に激痛が走る。
「…っ!?…ぃっ…つぅー…」
立ち上がる事が出来ずに忍は缶ビールを抱えたまま踞った。
「…あれ…?治った…」
まるで押し寄せた波の様に痛みが消えた。
「忍?ビールまだ?」
ひょっこり顔を覗かせた右京を振り返って「はい」と缶ビールを手渡す。
と、突然忍が天井を見上げた。
「…どうした?」
「…“声”が…」
「“声”?」
「今、笑声が聞こえたの。」
そう言われて耳を澄ますが聞こえたのは居間の馬鹿騒ぎだけだ。