とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



右京は「あれの事?」と居間の方を指差す。



「じゃなくて子供の笑声!」



「子供の?…何も聞こえなかったけど…」



「あっ…ほらまた!」



そう言われても彼には何も聞こえない。



「隣の家じゃねぇ?クリスマスだし、孫でも来てるんだろ。」



「えー…そうかなぁ…」



そう言って居間に戻る右京の後を追いかけようとした時、パァン!と何かが弾ける音がしたのだ。



「っ!?…右京っ!!」



「ん?」



「…どうしよう…」



今にも泣きそうな表情の忍に右京は首を傾げる。



「…は…破水したぁ…!」



「ええっ!?」



ビールの缶を投げ出して駆け寄ると、彼女の足元は水浸しだった。



「かっ…母さん!!忍がっ…!」



苦しそうに顔を歪めた彼女を支えるが、ただオロオロするばかりだ。



< 303 / 469 >

この作品をシェア

pagetop