とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
右京は「あれの事?」と居間の方を指差す。
「じゃなくて子供の笑声!」
「子供の?…何も聞こえなかったけど…」
「あっ…ほらまた!」
そう言われても彼には何も聞こえない。
「隣の家じゃねぇ?クリスマスだし、孫でも来てるんだろ。」
「えー…そうかなぁ…」
そう言って居間に戻る右京の後を追いかけようとした時、パァン!と何かが弾ける音がしたのだ。
「っ!?…右京っ!!」
「ん?」
「…どうしよう…」
今にも泣きそうな表情の忍に右京は首を傾げる。
「…は…破水したぁ…!」
「ええっ!?」
ビールの缶を投げ出して駆け寄ると、彼女の足元は水浸しだった。
「かっ…母さん!!忍がっ…!」
苦しそうに顔を歪めた彼女を支えるが、ただオロオロするばかりだ。