とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



荒い息を繰り返す忍は暫くすると落ち着いたように脱力し、「ごめん…」と呟いた。



が、ものの15分程でまた苦しみ出す。



「し…忍…どうして欲しい?何か飲むか?…気を紛らせたら楽になるんじゃないか?…親父、オーディオ付けてやれよ。」



「あ、ああ、そうだな…何系がいいかな…バラードか?いや、やっぱりお前の好きなバンドの─」



「っ…ねぇ…。」



何処からそんな低い声を出しているのかと思えるドスの利いた低い声に二人は凍り付く。



「…お願いだから黙ってくれないっ!?」



その様子は正に妖怪のようだ…。



右京と京助は「はい…」と小さく答えて黙り込んだ。



心なしかハンドルを握る京助の手が震えているように見えた。



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