とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
陣痛の間隔は徐々に短くなって来ていた。
「もう少しで病院だからな!?」
額に汗を滲ませた忍は頷くだけで精一杯だ。
病院に到着したが、忍はよろよろとしてなかなか思うように歩けない。
見かねた右京が抱き上げようとすると「痛いから触らないで!」と妖…いや忍に言われ、渋々彼女のペースに合わせる。
「黒崎さんですね~こちらへどうぞ~」
にこやかなナースはのんびりとした口調でそう言うと陣痛室へと彼女を促した。
「あ、御主人以外はご遠慮下さいね~」
「えっ…でも娘が…」
「お父さん!私達は一旦戻りましょう?」
静は右京に「頼んだわよ」と言うと去って行く。
さすがに右京も心細くなり、「あの…」とナースを呼び止めた。