とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「つ…妻は大丈夫なんでしょうか…こんなに苦しんでいる姿は見た事ないので…」
「大丈夫ですよ~。破水しちゃうとお産の進み具合が早いんです。」
そう言って彼女は忍を診察し、「あと3センチかな~…」と呟いた。
…3センチ?…3センチって何!?
戸惑う右京にナースはにっこりと微笑む。
「奥さんも苦しんでますけど、赤ちゃんも頑張ってますからね~!しっかり支えてあげてくださいね、お父さん!」
…“お父さん”…?
そう言われるとくすぐったい。
「そうか…俺、親父になるのか…」
今更そんな事をぼやく右京を忍が何か言いたそうな顔をしたが、彼女はそれどころではないらしい。
う゛~と唸る彼女の髪を撫でる。
「忍…頑張れよ!俺、がついてるから…!」
彼女の手を握りながらふとエバンスに言われた言葉を思い出した。