とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
“出産に関しては男なんて役立たず…”
本当にその通りだと思う。
出来るなら代わってやりたいがこればかりはどうにもならない。
右京は痛みに耐える忍の腰を撫で、彼女の汗ばんだこめかみにキスを落とした。
呼吸を整えるように息をする忍は「大丈夫よ…」と呟いた。
全然大丈夫じゃない忍を見て思わず右京は泣きそうになる。
そっと右京の頬に手を伸ばし、キスをせがむ忍に触れるだけのキスをした。
「っ…!あ…あああぁぁぁ…っ!」
叫びに近い声にナースが「失礼しま~す」と現れたかと思うと、彼女の布団を捲って中を覗く。
「そろそろ移動しましょうね~」
「こんな状態で動かすの!?」
「分娩室に行かないと~。御主人どうします?」
「どうって?」
「立ち会いますか?」
「はい…!是非!」
そんなつもりは無かったのに、気付けば右京は即答していたのだった。