とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




右京から電話が来たのは0時を30分程過ぎた頃だった。



落ち着きを払ったようにお茶を啜るが、湯呑みを持つ手が震える。



大事な愛娘が出産とあっては心配で心配で仕方がないのだ。



だがここで取り乱しては一家の大黒柱として恥ずかしい。



電話に出た静は「そう!産まれたの~!」と嬉しそうな声を上げた。



京助はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろす。



自分の後ろで「うんうん…それで?」と話す声は聞こえるが、内容が解らない。



ダンボの様に聞き耳を立てている京助に気付いた彼女はクスッと笑って受話器を差し出す。



「男の子ですって!」



「そ…そうか。」



受話器を受け取り彼は「もしもし」と冷静を装うが、声が上擦ってしまった。




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