とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
至近距離で微笑み合い、二人はスヤスヤと眠る赤ん坊に視線を戻した。
むにゃむにゃと口元を動かしている赤ん坊の頬を突っつきながら「そういえば…」と右京が呟く。
「あの時の忍は凄かったな…」
「あの時って?」
「陣痛の時。あまりの形相に俺もクソ親父も縮み上がったし…。」
「ちょっ…ひどっ!」
「いや、だってめっちゃ怖かったもん!まるで妖怪…痛っ!」
忍に脛を蹴られ、「冗談だよ」と足を擦る。
「あの時は本当に苦しかったんだから~!」
「でもさ………なんでもない。」
「なによ、言ってよ!」
口を尖らせる彼女の耳に右京は小声で囁く。
「陣痛に耐える忍の表情…最高に色っぽかった…痛っ!」
今度は肘鉄を喰い、右京は脇腹を擦りながら「本当の事なのに…」と呟くのだった。