とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



至近距離で微笑み合い、二人はスヤスヤと眠る赤ん坊に視線を戻した。



むにゃむにゃと口元を動かしている赤ん坊の頬を突っつきながら「そういえば…」と右京が呟く。



「あの時の忍は凄かったな…」



「あの時って?」



「陣痛の時。あまりの形相に俺もクソ親父も縮み上がったし…。」



「ちょっ…ひどっ!」



「いや、だってめっちゃ怖かったもん!まるで妖怪…痛っ!」



忍に脛を蹴られ、「冗談だよ」と足を擦る。



「あの時は本当に苦しかったんだから~!」



「でもさ………なんでもない。」



「なによ、言ってよ!」



口を尖らせる彼女の耳に右京は小声で囁く。



「陣痛に耐える忍の表情…最高に色っぽかった…痛っ!」



今度は肘鉄を喰い、右京は脇腹を擦りながら「本当の事なのに…」と呟くのだった。



< 316 / 469 >

この作品をシェア

pagetop