とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
真下から見た師範はまるで怒り狂った大魔神だった。
彼が本気なのを悟り、右京の血の気がひいていく。
「のわぁっ…!?」
メキッ…と床に突き刺さる木刀に右京は「殺す気か!?」と叫んだ。
「だ…だいたい孫を抱くのが夢だったんだからいいだろ!?叶ったじゃねぇか!」
「うるさいっ!ワシの夢は…孫の名付けに変わったんじゃーーー!!」
…ヤバイ…!マジだ!
逃げ回る右京は道場を飛び出し母屋へ走る。
「右京ぉぉぉぉーー!!!」
ドタドタと渡り廊下を走り勢い良く居間の襖を開ける。
ちゃぶ台を拭いていた静が驚いて振り返った。
「ど、どうしたの!?」
「こ…殺されるっ!」
「はぁ?」
背後に迫る殺気に飛び上がると、右京は静の影に隠れた。