とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「なんなのかしら…」
不意に呟いた忍にルークはピクリと耳を動かすと、片目を開けて彼女を盗み見た。
どうやら独り言だったらしく、忍はテレビ画面に視線を向けながらブツブツと喋り続けている。
「…虐待の次は幼児の転落死なんて…嫌な事件って続くものなのかしら…」
「私も気を付けないと」と彼女は溢すが、不要な心配だとルークは内心思う。
父親の力をしっかり受け継いだケイには“転落”なんてする筈がないのだ。
例えそれが何者かの故意だとしても、自分が着いていれば問題ない。
ただ気になるのは忍の言う通り、人間界で立て続けに起きている数々の事件だ。
─“この世界には死が溢れてる”─
ルークはそう思えてならなかった。