とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「…居ないんです!!お願いします、捜して下さい!!」
どうやら誰かとはぐれたらしい。
確かに店内は各売り場で人だかりができている。
はぐれてしまっては捜し出すのも一苦労だろう。
忍は密かに独りで来て良かったと思った。
「あ…急がないと!」
忍は化粧品コーナーの福袋をワゴンに戻すと、お目当ての婦人服売り場へと急いだ。
丁度エスカレーターに乗った時、館内放送のチャイムが鳴った。
─「…ご来店誠にありがとうございます…迷子のお呼び出し…申し上げ…」
雑踏に紛れ、良く聞き取れない。
─「…キ君…稲葉ハルキ君2才が…」
あの女性がはぐれた子供だろうか。
「…2才か…」
忍は辺りを見回すが、婦人服売り場にはそれらしい子供の姿は無かった。