とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
かさ張る荷物を手にデパートを出て駅へ向かう途中、車道をサイレンを鳴らした救急車とすれ違った。
「なんだろ…事故?」
今度はパトカーが2台…。
バス通りへと走り去って行くのを見ながら、渋滞は大丈夫だろうかと思う。
ただでさえ寄り道をし過ぎて遅くなってしまったのに、これでは何を言われるか判らない。
忍は早足でロータリーまで来ると、バスではなくタクシーに乗った。
「黒崎古武道場までお願いします。」
運転手は「はいよ」と短く答えると、ゆっくりと走り出した。
「ありゃ…事故かな…」
ものの見事に目の前には渋滞が出来ている。
「やっぱりさっきの救急車とパトカーは事故だったのね…」
「最近事故多いからねぇ。大丈夫!抜け道知ってるからね。」
さすがタクシーの運転手である。
地元の自分ですら通った事のないルートで難なく渋滞を回避してしまったのだった。