とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




二日酔いで頭がガンガンする。



更衣室で着替えてからフロントに到着し、早々にぐったりと踞るしのぶを同僚が心配そうに覗き込んだ。



「ちょっと…大丈夫!?」



「…ただの二日酔いよ…」



「あんたにしては珍しいわね…」



仕事に支障をきたすような飲み方を普段しないだけに、彼女も首を捻る。



「昨日なんかあったの?」



「昨日は…よ、よく覚えてない…」



そう誤魔化したが、昨日情事を忘れられるはずがない。



いつもと違う彼の顔がちらつく。



ベットの中でしのぶを抱きながら田所は初めて愛を囁いたのだ。



それは今までの関係を否定する行為で、正直しのぶはどう反応していいのか判らなかった。



「お前が好きだ」と言う彼に「私も」と言えば良かったのだろうか?



しかし、安易に答えたら彼との関係を壊してしまいそうでしのぶは何も言えなかった。




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